Abstract:
本研究は、タイ人大学生日本語学習者(T)および日本人大学生(J)が書いた日本語就職用自己PR文を比較し、何をどのような形式でPRしているのかを明らかにする。データは、実際の応募に用いられた、または実際の授業で提出された就職用自己PR文で、T58人およびJ42人が書いた合計100編の文章を電子化したものである。データを分析し、主に次の5つの結果を得た。①「自己PRの話題」の出現傾向はT、Jデータ間で似ていた。②「自己PRの対象」の出現傾向はT、Jデータ間で異なっていた。Tデータは「主観的能力」がJデータの約2.5倍現れた。Jデータは「考え方」がTデータの約2倍現れた。③本研究では、約5人に1人以上に用いられた語を「多用された語」と定めた。「多用された語」は、Tデータが36語、Jデータが39語であった。このうち約半数は共通の語ではなかった。「多用された語」は、T、Jデータ共にデータ全体の約85%の文で現れた。④「可能表現の使われ方」はT、Jデータ間で異なっていた。Tデータは、潜在的に可能なことを表す表現がJデータの約2倍現れた。Jデータは、実現したことを表す表現がTデータの約2倍現れた。⑤「多用された語」のT、Jデータ間の違いは、「自己PRの対象」の違いと傾向が一致していた。これらの結果から、自己PR文で「多用された語」は、「自己PRの対象」を判断させた主な要因になっていたと考える。